涸沼でサイクリング ゆったりペダル 時々 停車

涸沼の周辺は低地で起伏もあまりありません。特に沼の護岸は一部を除いて、平坦な道が続きます。この立地にピッタリの乗り物と言えば自転車ではないでしょうか。

そんな環境を活かすためなのか、涸沼の北岸には「涸沼サイクリングロード」があります。また、南岸は自転車専用ではありませんが、護岸道の一部は自転車でも通行可能になっています。

涸沼周辺を走るのに良い自転車はのんびり走れるクロスバイクか、ママチャリで親しまれている「軽快車」しょう。MTB(マウンテンバイク<舗装外>)なら護岸の斜面も走れるかもしれません。走りに特化したロードバイク(ロードレーサー)でも問題なく走れると思います。ただし、南の護岸は砂利道なので、細いタイヤのロードバイクは不向きかもしれません。

水と空を自由に行き交う鳥たち、それらをのんびり眺めながらペダルを漕ぐ。涸沼でのサイクリングは、ある意味とても贅沢な時間なのかもしれません。

それでは、自転車で巡る涸沼周辺を映像と写真をご覧ください。

広浦公園〜下石崎 遠近法 消失点 果てしない4分 

はじめに、広浦公園キャンプ場から東へ向かい自転車を走らせます。

キャンプ場のバンガローを右手にみながら道は緩やかな左カーブが2回続きます。そして、それを抜けた景色にまず驚かされました。そこにあるのは、ただ、ただ、真っ直ぐなサイクリングロードでした。

左側は稲刈りを終えた田園、右には涸沼。この直線は1キロ余り続きます。そこには、田んぼと涸沼以外はほぼ何もなく、一点透視図法の見本のようにサイクリングロードのパースが「点」になって見えました。ひょっとすると地平線も見えるのではと思うほどでした。

広浦公園〜下石崎 遠近法 消失点 果てしない4分

しっかり舗装されて整った道は、自転車を軽快に進める事が出来ます。道幅はそれほど広くありませんが、涸沼側には柵(ガードレール)が整備されています。そのため、水面の方によろめいても落ちる心配はありません。また、狭い道幅のため自動車が入ってくる心配も無いので、小さなお子さんとも安心してサイクリングが楽しめると思います。

果てしなく続くかに見えた一本道でしたが、4分程ゆっくり進むと道は左にカーブします。すると水面にせり出した小屋がありました。案内板に「下石崎水位・流量観測所」とあります。そこから、50メートルほどで、道は一般道に突き当たります。左に行くと田んぼに、右に行くとそのままサイクリングロードです。また、観測所の下は船着き場になっていて、10艘ぐらいの舟がありました。きっと朝には、ここからシジミ漁に出かける漁師がいるのでしょう。

広浦公園〜下石崎 遠近法 消失点 果てしない4分

下石崎〜

緩やかな左カーブの先には、再び、消失点が見えそうな直線道路です。ただここは、先程よりも短いものでした。それにしても、こんなにも開放的なサイクリングは初めてです。今までサイクリングロードを走った事はありませんでしたが、街中や一般道路との圧倒的な差を強く感じました。

この直線が終わると道は左右に緩やかに蛇行します。

対岸との距離もだんだん短くなってきます。

涸沼の果て、涸沼川の始まりです。この辺りからまた道は左にカーブします。すると先程まで水面だった右側が一面の葦の群生地に変わりました。薄茶色く立ち枯れてますが、赤みを帯びた夕日に照らし出されると何ともドラマチックです。葦の色が空の青さに栄える。これぞ、「補色」のお手本のような光景です。

この後、道は左へ逸れて突き当たります。正面に太陽をみながら直角に右に曲がり用水路の橋をわたります。橋の終わりの斜面は急勾配、用心しながら更に直角に右へ曲がります。ちょうど逆「コ」の字を書いた形に進みました。

下石崎〜

ここから道の両側がガードレールになりました。葦との距離も少しづつ近づいてきます。しばらく進むと、ガードレールが数十メートルなくなり、また現れます。ここからは両側が田園になってしまいました。涸沼川とはしばらくお別れです。蛇行する田んぼの中の一本道。スケールは全然違いますが、まるで敷かれた線路を走っている列車の運転手のような気分でした。

更に進むと両側のガードレールが一切なくなります。そして、ここで自転車道が一般道に変わり、住宅地に入ります。もう、目指す大貫橋はすぐそこです。

県道106号線にでると、大貫橋をまでは2〜300m。

夕日に照らされて、橋のアーチがより赤く際立つ大貫橋、それを受けてしっとりと流れる涸沼川を見た時の清々しい達成感が印象的でした。きっと、初心者にもちょうど良いサイクリングコースです。

下石崎〜

涸沼駅 〜アクセスも抜群(自転車)〜

鹿島臨海鉄道「涸沼駅」から涸沼までは約700m。南岸のサイクリングのスタート地点にはうってつけの立地です。ここは、県道16号線沿いにある小さな無人駅で「涸沼観光センター」も併設されています。

この区間の鹿島臨海鉄道は高架橋上の線路を走るため、駅も必然的に橋桁の上になります。涸沼までは少し距離がありますが、低地の中の高い場所です。そこで、眺めを楽しみにプラットフォームへの階段を上ってみることにしました。無人駅なのでホームへの出入りは自由です。ホームを端まで歩き、ほんの少し涸沼を見る事ができました。絶景とは言えませんでしたが、涸沼へのアクセスはとても便利です。眺望をあきらめて、涸沼へ出発しようとすると、偶然に列車がホーム入ってきました。一両だけの小さな車両は大洗方面行きでした。

涸沼駅 〜アクセスも抜群(自転車)〜
涸沼駅 〜アクセスも抜群(自転車)〜
余談

一両だけの小さな車両が停車しました。大洗方面へ向かう車両です。そんな姿をみて思った事があります。

★可能ならば、鉄道に自転車を乗せて涸沼に遊びに来るのも良いかも知れません。

★奇しくもお隣の大洗駅は、とあるアニメの聖地としてイベント等が多く開催されていると聞きます。劇中のシーンを廻る足に自転車はとても重宝だと思います。「アニメの聖地」を楽しんだその足で、「涸沼の湿地」も楽しむ企画を作るのも面白いかも知れません。

護岸大洗町 〜チョットしたオフロード〜

涸沼駅から県道沿いに自転車を走らせると、すぐに県道114号線の起点の丁字路に突き当たります。右折して16号線を進むと、100m少々でまた突き当たります。そして、今度も右折するのですが、センターラインのない細道です。

そして更に、車一台が漸く通れる程の細い路地を涸沼岸に向け曲がりました。

生け垣が高く生い茂っています。車で通る人も行き止まりを警戒して、曲がりたくないような路地でした。

道をしばらく進むと辺りが明るく開けました。護岸に続きそうな葦原が広がっています。道の轍が深かったので用心して進むと護岸が見えました。突き当たりに沿うように斜面を昇ると護岸道、涸沼の岸に到着しました。

15時を過ぎて、太陽も次第に赤みを増してきました。ここで、北岸のサイクリングロードとの大きな違いに気がつきました。砂利道なのは勿論ですが、その砂利を車輪が踏む音に鳥たちが驚き、大きな羽音をたてながら沖に逃げてゆきます。鳥たちには迷惑でしょうが、これはこれで、見応えがありました。

緩やかに蛇行している道は風も少なく、背中にあたる太陽の温もりが自転車を押してくれているかのようでした。

2分ほど走ると遠くの水面に岸から突き出した防波堤、その向かい側に大きな黒い屋根が見えます。「夕日の郷 松川」です。

護岸大洗町 〜チョットしたオフロード〜
護岸大洗町 〜チョットしたオフロード〜

 

ここは、別頁「涸沼朝夕・涸沼川を遡る」で、夕日の撮影をした場所です。

以前、車で来た場所を別の角度と方向から自転車で眺める。違和感とワクワク感を覚えました。

新しい砂利道

 

松川から500mほど進むと急に路面の砂利が白っぽくなりました。どうやら、新しく敷き直したようです。これで、轍に車輪をとられる事はなくなったのですが、砂利が道に馴染んでいないので、これはこれで、気を使います。そんな、白い砂利道にすぐに慣れました。そして、気づくと右側が竹藪になってます。

今まで走ってきた道は必ず両側が開けていたのに、突然右側が見通せなくなりました。普通ならば何も気にならないのでしょうが、竹藪に遮られた視界が新鮮に思えました。この竹林は私有地なのでしょう。しばらく続くのかと思ったら、1分足らずでまた広々とした景色に戻りました。

視界は開けたのですが、様子が少し違いました。造成中の宅地のようです。重機を使い整地をしているようでした。次に目にとまったのが太陽光発電のソーラーパネルでした。クリーンエネルギーとは云いますが、視界もクリーンなパネルを発明をしてほしいものです。

その後、道は大きく右にカーブします。見ると護岸道の左、涸沼沿いに高さ70〜80cmのコンクリートの台のようなものが続いていました。防波堤なのか防護壁なのか、ともあれ、これで水に自転車と一緒に落ちる心配はなくなりました。この防波堤のような壁が続く辺りからは、ひたすらまっすぐな道になります。

新しい砂利道

 

対岸に目を向けると「涸沼サイクリングロード」のガードレールが見えます。線対称の反対岸、直線が続くこともうなずけます。

更に、もう一つ気がついた事があります。この付近は、涸沼を挟んで両岸が広大な水田になっています。アスファルトと砂利、走っている道の質感はちがいますが、左右にひろがる景色がほとんど同じ田園…、これも涸沼の水が育んだものなのでしょう。

川と沼の境界 〜 ゴール

と、景色に見とれていると、再び道に深い轍が刻まれています。ここから先は少し凸凹した道がつづきました。サスペンションのあるMTBで走ると尻に負担が少ないとかもしれません。そんな轍やくぼみ、枯れ草を乗り越えて走り、しばらくすると岸に標識が立っています。建設省常陸工事事務所の看板で「河川管理境界 涸沼川」とあります。ココが涸沼の終わり、そして、涸沼川の始まりのようです。この看板の足下は高低差があり、道も急に下がるので走行には注意が必要です。

正面遠くには赤いアーチの大貫橋が見えて来ました。この際だから大貫橋まで行ってしまおうと思っていた矢先、道は大きく右にカーブしているので、真っ直ぐ橋へ向かうことができません。涸沼川の用水路が横切り、道をふさいでいました。日も暮れかかって来ていたので、迂回してまで大貫橋を目指すのをあきらめ、引き返す事にしました。

川と沼の境界 〜 ゴール
川と沼の境界 〜 ゴール

 

涸沼駅まで

帰り道は西に傾く太陽を追いかける形になりました。キラキラと水面に反射する光の魅力に、何度もペダルを止めてシャッターを切りました。帰り道は颯爽と走るつもりでしたが、涸沼の景色に後ろ髪を引かれてしまいました。

涸沼駅まで
涸沼駅まで
涸沼駅まで

 

日没の写真は「夕日の郷 松川」の少し先で撮影しました。

太陽が沈んだ余韻をしばらく眺めたあとは、岸を離れるためにスピードあげて走りました。いくら日が長くなったとはいえ、のんびりしていると闇に飲まれてしまいそうな時間です。県道に出る頃には辺りはかなり暗くなっていました。

サイクリングの楽しみ方は色々あります。ひたすら速く、長距離を走る自転車競技もあれば、ランニング感覚、健康維持のために自分のペース走る事もできます。そして、人にも自然にもエコな通勤手段にも活用できます。

どれも同じ自転車ですが、今回紹介したサイクリングは、そんな流行りの乗り方とは少し違うかもしれません。

ペダルを漕ぐとゆっくりと移り変わる景色、自転車で移動しなければ見つけられないモノが涸沼周辺には多くある事を知りました。自転車と涸沼の組み合わせは、目まぐるしく変わる現代の日常で、忘れかけた何かを気付かせてくれるかもしれません。

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